人生の中で一度は迎えるであろう「受験」という節目。高校受験であったり大学受験であったり。いろんな試験、受験の機会があろうかと思います。
佐倉道場の中でも、とある先輩の相談を受けていました。
今年高校受験を迎える門下生もいますし、それはとても大事なことです。空手に夢中になることは、勉学を疎かにすることの免罪符にはなりません。大変ですよね。
■福島県の公立高校受験事情
いろんな受験がある中で、最も共通する試験と言えば高校受験かと思います。福島県で言えば、前期選抜には特色選抜、一般選抜、連携型選抜と3つの類型があります。どれも共通の学力検査が課せられますが、それに加え「調査書」も加味されます。(学校の特色に応じて面接・小論文等も加味できますがここでは割愛)
空手を頑張っていた門下生も、中学校に進学すると同時に部活動に入り、その忙しさや新しい楽しみにはまって空手からは離れていく門下生も、熊本、東京、福島でもたくさんみてきました。
なぜ長年続けてきた空手があるのに部活動を?という思いが少なからずあったのですが、それには高校受験が大きく関与しています。その要因が「調査書」でした。
端的に言えば、部活動に入っていないと高校受験に響く、ということ。そうなれば進路に関わることなので、何とも難しい問題でした。
■調査書?
ところで部活動に入っていないことが受験に響く、というのは具体的にはどういうことなのでしょうか。
福島県教育委員会のホームページには、学校の先生に向けたこの調査書記入上の注意、記入例が公開されています。
(出典:https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/edu/r7koukounyushi.html)
それを見てみますと、部活動と調査書、ひいては受験に影響するという仕組みを紐解くことができます。
上から見ていきますと、志願者の氏名や出願先、その次に各教科の学習の記録と続いていきますが、部活動が関わるのは「特別活動等の記録」になります。内訳をみると学級活動、生徒会活動、学校行事、その他の活動とあります。その他の活動について注釈を見ると、
スポーツ活動、文化活動等(部活動など、学校の活動として位置付けられているもの)に関する活動状況を、文章や箇条書きにより端的に記入する。
※下線は記入例のまま。
となっています。つまり、道場でどれだけ頑張っていたとしても、ここに記入されないことで不利になる。ということが、影響していたということだと分かります。
■本当に受験に影響する?
結論として、「全く影響しないとは言えないが、その影響は極めて限定的」ということだと思います。その理由は以下の2点です。
①定量化できない
まず前提として調査書は点数化される。これが大前提です。
2020年度から現行の入試制度に変更されていますが、福島県の新入試制度リーフレットの中でも、それは明確にされています。
そこで調査書の内容を見てみると、点数化できるものは年齢は無視するとして、各教科の評価(いわゆる評定)、出席日数くらいでしょうか。
生徒会活動や学級活動、部活動の項目は定量化、スコアリングが難しいのです。例えば、「サッカーの大会で主将を務めていた」というA君と、「全国大会に出場したサッカー部の補欠だった」というB君は、どちらが何点と表せるでしょうか。
大会結果など端的に記入とされていますが、個人競技と団体競技はどう点数で優劣をつけるのか。大会実績がなかったら何も記入できないのか。
極端な話、県内にそこにしか特定の部活動がなく、なにもせずとも全国大会出場みたいな例もあるわけです。また書く先生の主観にも大きく左右されます。だから点数化は難しい。
福島県教育委員会の「令和8年度入学者選抜に関すること」のページに掲載されている『令和8年度福島県立高等学校入学者選抜における基本方針』において、一般選抜(2)には次のように記載されています。
一般選抜の合否判定に当たっては、学力検査と調査書の成績の比重を原則として同等とする。(以下省略)
この、原則として合否判定の半分を占める調査書が、○○の学校のXX先生に書いてもらえれば有利、なんてことは基本的にないでしょう。どこの地区、どこの学校であっても同じ指標で比較(点数化)できるように定められているはず。そうでなければ入試の判断材料として機能せず、不適切なのですから。
②部活動を排する流れ
空欄が大きくあればそれは不利なのでは?という気持ちもよくわかりますが、そもそも現在は深刻な教員不足を背景に、部活動を減縮、地域活動へ展開する流れがあります。
福島市ホームページ 『部活動の地域移行(地域展開)』
そのような流れがある中で、合否を左右するほど重要視されるとも思えません。
以上から、調査書における部活動の活動が受験に影響するのは次の2点の場面が想定されます。一つは面接試験の材料として。そしてもう一つはボーダーラインでの合否判定の材料としての場面です。
もちろん特色選抜で実技などある場合はこの部活動が合否に大きく左右することになりますが、道場の皆さま向けの記事なので、ここでは問題にしません。
■アピールすることは過去の栄光か?
就活界隈において「ガクチカ」という言葉があります。これは「学生のときに力を入れてきたこと」というエントリーシートの定番項目で、ここをバキバキに盛るために一人でインドを放浪して自分を探してみたり、バイトリーダーしてみたりと個性をいかんなく発揮して、企業面接でPRできる項目として有名です。
高校の面接試験も主旨は同じですが、学校生活で頑張ってきたことは基本的に「過去のこと」です。エースでした、キャプテンとして県大会に導きました。これは実績であり、同時に過去のことです。
引退しているので、それは当たり前なのですが。。。
空手の場合はそもそも引退ということがないので「いまも、継続してがんばっていること」をアピールできます。これは部活動にはない強みです。
実際、現在の福島市では「高校受験のために部活動に入る」という風潮はだいぶ変わっているとのことでした。それこそ地域のクラブに入っているので、道場でやっているので入らない。そんな選択肢の子も多いとのこと。そしてこの流れは、今後も全国レベルでトレンドは拡大の一途を辿るでしょう。
■結びに
私は部活動や受験を否定したいわけではありません。受験は言わずもがな大事なものですし、部活動で得られるものもたくさんあります。友達であったり、友達と過ごす時間であったり、苦楽を共にする楽しさであったり。それはそれで貴重な、しかも学生時代にしか得られないものです。
一方で継続することでしか手に入らないものも確かにあるのです。
私としては、どちらも大切にしてほしい。
新しいことに取り組めば楽しいし、そこに友達がいれば輝きも増す。そして田多数の人が経験する受験期間。その一時のために、いままで地道に積み上げてきたものを捨てる選択はしてほしくありません。
時に部活や受験で忙しくなり、道場に足を運ぶ回数が減ることもあるでしょう。でもそれでも、道から離れることさえなければ、いつでも再開できる場所であることが武道の、門馬道場の強みです。
受験でも部活で忙しくても大丈夫。そんな逆境にくじけない心を、この道場で養ってきたはず。それを胸に、今後も共に「空手道」をそれぞれの歩幅で歩めたら。これほど指導員として嬉しいことはありません。
冬を迎え受験も追い込み!しっかり体調管理には気をつけて頑張っていきましょう!
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