2017年10月6日金曜日

DNAの思い出

 名刺には各地区の門馬道場の道場名を記載しています。その中でも異彩を放つ『DNA』。道場名とアンバランスな横文字の名前は、フィットネスジムの名前です。

 DNAは、福島駅構内の奥にあります。



 
DNA正面エントランス
(木)キッズ 17:30~18:45
   一般部 20:00~21:30
福島駅の西口からPivotを通り過ぎ、ずっと真っ直ぐ歩いていくと入口があります。このジムのプログラムに、門馬道場極真空手があり、キッズクラスと一般部クラスが木曜日に開講されています。

 あまりに多くの被害を出した東日本大震災。その後、一番初めに新規で開講されたクラスであり、門馬道場にとっても復興の一歩目となったクラスでもあります。橋本指導員から引き継ぎ、今は私が一般部のクラスを担当しています。少年部のクラスも大盛況で、追加の募集を行えないほど多くの子どもたちが稽古をしています。

 実はこのDNA。震災後に福島に来た私にとっても、忘れられない大事なクラスです。あれはまだ門馬道場に入門する前のことでした。

 福島駅を利用して通勤している関係上、このDNAは一番身近にあった道場かもしれません。ある日、私は仕事帰りにDNAで門馬道場を見学しに行きました。
 たまたまはやく仕事が終わったことから行ってみようと思い立ったので、もちろん運動着も道着も持ってきていません。あくまで「見学」をしに行ったのです。

 DNAジムの奥の方に、ドンと鎮座しているリング。そしてその周辺が、格闘技エリアとして設定してあります。そこでは橋本指導員のもと、大人の人たちが稽古していました。いきが良さそうなおにーちゃん、クールな男性、人のよさそうなお父さん、元気そうなおばちゃんといった印象のメンバーでした。

 橋本指導員に挨拶して、見学をお願いしたところ、快く受け入れてくださりました。むしろ見学どころか体験のゴリ押しです。
 極真の道場といえば道場を預かる強面の人が、千尋の谷から丁寧に落とし続ける獅子のごとく指導をしているイメージですが、爽やかな笑顔と有無を言わさぬ姿勢で見学ではなく体験を勧めてくるのです。

 私はほのかに仕事の疲れが残っている状態ではありましたが、柔らかな物腰と爽やかな笑顔で異様な親しみを見せるこの指導員に、不気味さすら感じてしまいました。ひょっとすると二十年ほど前に生き別れた兄なのではないかと考えましたが、年が離れすぎているし、兄とは生き別れていないし、そもそも私に兄はいません。

 結果、靴下を脱ぎ、ネクタイを外して稽古の最後の列に加わることになりました。もともと見学だけ、という約束だったので、そっと奥さんに電話して
 「どうしよう、無理やり体験することになってしまった!」などと相談したことを覚えています。

 道場破りなど流行る時代ではないですし、思わぬ勘繰りを避けるためにも「何も知らないフリをして体験を楽しもう」と決意したのでした。
 三戦の立ち方も分からない、回し受けもよくできない、押忍という返事も照れながら、必死に体験しました。スーツ姿で。

 やがて稽古も佳境に入ろうかというとき、ビッグミットを構えられて、突きやヒザ蹴りの連打をした記憶があります。もう素人らしく見えるかどうかよりも、スーツのお尻が裂けていないかどうかというのがもっとも懸念されるような状況でした。


 実は、これが門馬道場との初めての出会いだったのです。
 あれから数年間が過ぎ、仕事の関係などで福島を離れた人もいれば、いまも必死に稽古している門下生もいます。

 あの見学のとき。爽やかに「では、体験する今日一日だけは『押忍』と返事してみましょう!」と、とても初心にかえって爽やかな気分にしてくれた橋本指導員とは、稽古していろんなことを話しながら郡山へ帰るような仲になりました。
 
 
稽古後にフォームをチェックする齋藤(当時3級)


















それぞれの目標に向かって、仕事や家庭のことを
終えて、大人が集まってくる。それだけでも素晴らしいことだと思います。
仕事、睡眠、休み、仕事。その繰り返しだけでは
人生のなんと空しいことでしょう。

夢中になれる何か、を探しているひとには、
空手を勧めたいと思います。

ぜひ一度、体験や見学にお越しください。

 ちなみにDNAにてあの日炸裂した、私の渾身の初心者演技は、「足の指の運動の時点で経験者だと分かっていた」のちに橋本指導員から明かされました。





 

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