2020年1月28日火曜日

心×技×体=???

 季節の風を感じさせる時候の挨拶とか、ご機嫌伺いといった日本らしい趣のある書き出しとかを省略して書きますが、インフルエンザA型ウィルス自家養殖家として、数日間横たわっていました。



 インフルエンザということでタミフルを処方されたのですが、せん妄などの副作用がまれに出るらしく、飛び降りたりしないようにといった恐ろしい注意書きが!!

 薬を服用しようがしまいが、常に妄想はたくましく羽ばたいているタイプなのであまり心配はしていませんでしたが、やはり病です。夜中、突如としていわゆる黒歴史的なものに心を揺さぶられ、発狂せずともこたつとソファにうずくまる事態に陥りました。思い出しただけでも恐ろしい。


 閑話休題。


 前回のブログでは、「武道教育って具体的に何?」ということをお話ししました。本来であれば結論にあたる、「武道教育で何のメリットが得られるの?」というところまで話をもっていきたかったのですが、まじめに書けば書くほど読み通せる人があまりいない孤高の記事と化してしまいます。



 なので、「門馬道場での武道教育っていうのは、こういうこと」というところで話を切っていました。けれども、多くの人がそうであるように、それに何かしらの価値やメリット、というと俗っぽいですね。つまり魅力がなければ、習いたい、習わせたいとは到底思えないでしょう。なので、今回は、その点に焦点をあててみたいと思います。



 さて、絶賛インフル中に突如黒歴史におそわれじたばたしたわけですが、私たちは基本的に感情によって行動しています。仕事でイラっときたり、家でホッとしたり。そして頭で考えることは感情によって大きく左右され、その当然の帰結として行動も感情の影響を受けて現れてしまいます。


 誰しもが一時期は経験するだろうと思っているのですが、試合の開始とともに相手に向かって走り込み、飛び込んで蹴る。はたからみると勇ましいのですが、自分の経験を振り返ると実は試合が怖いって思っていて。それを振り切るための思い切りのよさだったりするんですね。


 武道はよく「人格の完成を目指す道」と言われます。でも正直、それがどういうことなのかさっぱりわからない。


 よく人前でおどおどしなくなった、とか活発になったということを聞きます。それも一つの効果なのですが、ただそれだけでよいのであれば、モヒカンみたいな反骨精神に溢れる頭にしてやれば勝手に(強制的に)おどおどしなくなるような気がしないでもありません。

 たぶん私が思うに、武道がもたらしてくれる変化っていうのは、それだけにとどまらないもっと大きなものなんです。 


 よくカラオケで飛び道具として一部界隈で知られているJUDY AND MARYの『そばかす』。この曲は「るろうに剣心」という漫画がアニメ化された際の主題歌でした。この漫画がとても好きなのですが、その中の「新選組」、三番隊組長 斎藤一(はじめ)の印象的なセリフがあります。


「るろうに剣心」  和月伸宏

 「犬はエサで飼える 人は金で飼える だが壬生の狼を飼うことは何人にも出来ん




 壬生狼(みぶろ)というのですが、これは新選組の異名です。もともとは新選組が屯所構えた地名から、壬生の浪人という意味で壬生浪と呼ばれていました。しかし、厳しい取り締まりを続けるうちにやがて「壬生狼」と呼ばれるようになりました。
 セリフの最後の「壬生の狼」とは新選組のことであり、自身のことを指しているのです。

 そう。あなたを飼いならすことができるのは。他でもない自分自身だけ。


 自分を振り回し揺さぶる、そんな厄介な感情の手綱を完全に握ることができたとき。つまり、心技体が一致したとき、一切の感情はしっかり自身の流れに従う。
 そのとき、臆病さは慎重さに、無謀は勇気へと変わります。


 臆病と慎重、無謀と勇気は表裏一体で不可分のものなのですが、そのどちらになるかは、心のあり方が決めるように思います。
 湧いてくる臆病を慎重さに変えて、焦りが突き動かす無謀さを勇気に変える。その軸には確たる自分がなければならず、軸であれるかは心の強さが土台となって決まる。



 剣道では気剣体と言いますが、空手でいうならば気拳体でしょうか。つまり心技体を一致させる武道教育によって、自分を律することができるようになる。そうすると心の在り方は大きく変わります。


 臆病さも、無謀も、絶えず不安定、振動が起こっている状態です。水で言えば水面は常に荒れています。しかし、慎重さ、勇気があるときというのは、一切の迷いや不安なく、澄み切って落ち着き、月を写す水鏡のように静かです。その境地、心の在り方を目指すからこそ、武道では「明鏡止水」という言葉が使われるのです。(※)



 武道の究極の理想形とされる「流水」にしろ、心のあるべき姿をあらわす「明鏡止水」にしろ、水にかかわるのは面白いところですが、これより先はほかの機会に譲るとしましょう。



 心×技×体を武道教育によって育むことで、心の在り方が変わる。それはやがて視野を広げ、弱さに克ち、思考を変え、行動を変える。そしてそれはたやすく人生を変えてしまうほど大きな可能性を秘めたものだということを指摘して、この稿を閉じたいと思います。


 
 門馬師範なんて、ピンチがどっかんどっかん起こって周りがうろたえていても平然としていて。そして必ず切り抜けていきますからね(去年の福島県大会の開催然り)。
 師範のお話しを伺ったり、生き方や行動を見るといろんな発見があります。率先垂範で体現されていることから武道教育の何たるかを考えられて、こうしてブログでお伝えすることができています。
 だから思うわけです。いつかたどり着きたいなぁと。全然未熟でまだまだ遠いんですけど、師範のような明鏡止水の心に。


 そのための道は、武道教育でしか拓かれない。だからこそ。大きく、揺るがない価値をもっていると確信しているから。何を犠牲にしても、武道教育に尽くしたいって思える人間が、指導員として門馬道場に集まっているんですよね。



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(※)
 ちなみにこの明鏡止水。かつて空手ブームを生み出した「ベストキッド」という古い映画があります。それをジャッキー・チェンとウィルスミスの息子ジェイデン・スミスが「カンフー版 ベストキッド」としてリメイクしているのですが。
 そのストーリーでも大きなテーマとして「明鏡止水」が取り上げられていました。普通にアクション映画としても面白いので、ぜひ観てみてください。
 




国際空手道連盟極真会館
世界総極真
NPO法人 極真カラテ門馬道場

師範  門馬 智幸
指導員 山名慎一郎

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