ときどき、道場で出くわす忘れ物。名前が書いてある場合は写真に撮って、保護者さんにお知らせしています。
道場で保管していますよ、というお知らせで、次の稽古に支障がないかどうかを確認するためですが、「すみません」とお返事をいただくと、私の方も恐縮してしまいます。後ろめたい気持ちになってしまうのです。
ある日のこと。道場へいく準備をしておこうと道着類やサポーターをバッグへ入れて準備していたのですが、帯が見当たりません。
あれ?と思い、室内中探し回ったのですがとんと見当たらない。黒帯なので、代わりももちろんありません。
いよいよ家じゅう探して見つからず、諦観の境地に達しました。
よし、密造しよう。
段位を允許(いんきょ)されると、帯とともに「昇段状」というものも一緒に頂きます。
そこには昇段を認めるという内容の文言が日本語と英語で記してあります。
また日付、氏名、認定団体名などそうそうたる方々のお名前が入っています。さらに昇段状そのものにも透かしが入り、昇段者の顔写真と一体をなす形でエンボス加工の印も入っていて、厳重なものです。
その昇段状を根拠に黒帯をつくってもらおうというわけです。一回くらいは帯を忘れたとして茶帯でも締めて稽古すればいいかもしれません。でも二回、三回とと続くと黒帯を無くしたことが分かってしまいます。
ということで、当時、極真空手の黒帯を作っていた武道具メーカー本店に電話をしました。
「すみません、黒帯の注文をしたいんですけれども…」
「はい、大丈夫ですよ!種目はどちらですか?」
「空手です」
「帯の種類や刺繍の色などご要望はありますか?」
「極真空手の黒帯を作ってください」
「極真の… 少々お待ちください」
(担当者が代わる)
「申し訳ありませんお客様。極真空手の黒帯は、道場を通して師範の方からの注文でないと作れません」
「昇段状、顔写真入っていますので原本お持ちして、免許証などの公的身分証明と突き合わせてもらって構わないので作ってもらいたいんですけれども。本社(埼玉)までもっていきますから!」
「申し訳ありません。一般の方からは、極真空手の黒帯注文はお受けできません。道場はどちらですか?」
「〇〇派〇〇道場です」
「でしたら、道場・師範を通していただければ注文をお受けできますので」
「それが怖くてできないからお願いしてるんですが!!」
と言っても、とりつくしまもなく注文など受けてもらえませんでした。黒帯なくしたのでつくってください、なんて口が裂けても言えません。
しかし、極真空手の黒帯というと一見さんお断りで、信頼できるところからじゃないと注文は受けてもらえません。だからメルカリやらヤフオクで、名前の入っていない極真空手の黒帯が数万で取引されていたりします。転売屋も真っ青ですね。
さて、黒帯の密造を断念した私がどうなったのか。
もう半泣き状態で道場を探しにいったところ、道場の手すり、広いところに大事にかけたままにしてありました。大事にして忘れるっていうのもなんだか抜けてる。安堵でたぶんまた半泣きになっていたと思います。忘れ物には気をつけたいものですね。まさに今朝。
今回、門馬師範のお取り計らいで、黒帯を作っていただきました。封を切る前の黒帯は指導員でもなかなか目にすることができないので、きのうの霞町の稽古でみんなに見せたところ、目が煌めいていました。
いや、本当にすごいですよね。私たちだと作ってもらいたくても門前払いですもん。お金で買えないものっては陳腐ないい回しですが、やってきた人しか手にすることができない。だからこそ重い。そこについては堅い話になるので次回の記事に譲りたいと思います。
今回、作っていただいた帯も大事に使っていきたいと思います。門馬師範、ありがとうございました!
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