2021年2月10日水曜日

昇級審査の基準について【2021・冬】

 2021年冬季審査会が近づいてきました。昇級審査の基準については、みなさん興味があるため最後まで読んでいただけるだろうと、思いを多少長くとも書くことができるので、絶好の機会として私は捉えています(^^)

■昇級審査と推薦の基準について

■上級の帯になるためには

■試験対策

■最後に


 まだ開催の形態がどのようになるかは、師範はじめ職員の先生方が、現況と施設の使用とで調整してくださっている最中です。そのため詳細は決定次第、おってご連絡させていただく形になります。

 しかしながら組手の組み合わせや開催の形態にも影響してきますので、お知らせしていた通り、来週から順次、審査会へと推薦していく予定です。では、以下その基準についてなど徒然に。


■昇級審査と推薦の基準について

 昇級審査会は、空手修行状況を審査して、その力量に応じて帯が授与されます。当道場では、昇級審査を受審できるのは指導員(または支部長、師範代、師範)に推薦された門下生になっています。



 審査基準については、腕立て伏せ(拳立て)○回以上、帯飛び○回以上と客観的基準で明確に定まっているものから、基本稽古、移動稽古、規定型、自由型、組手など門馬師範はじめ指導員によって審査されるものまで幅広く項目があります。



 その前段階として、推薦基準についてもときどきブログで書いてきました。いわば推薦基準というものは、「審査項目では測れない部分の審査」だと私は考えています。



 わかりやすい例で見てみましょう。例えば、修業期間は前回の審査から1年以上経過していて、それなりに長い。けれど、その前後ではほとんど稽古に来ていない。


 こういった場合は、いくら修行期間が経過していても、推薦することはできません。これから先も頑張ってくれるだろう、という期待をして推薦することもできるでしょう。でも極端な話、これから先も頑張ってくれるか、なんていうのは指導員も本人にすらもわからないのです。だから、少なくとも審査のあるその「いま」を頑張れていない場合は、推薦することができません。



 これは極端な例ですが、一概に「基準はこうです」と書けないのが推薦基準です。ひとりひとりのおかれた環境や状況が違えば、性格も違う。

 初級の場合、帯が引っ張ってってくれる成長を期待して推薦する部分もあれば、それが中級や上級となると、そういうわけにもいきません。

 通常であれば、稽古参加状況、合宿・セミナーへの参加状況、道場行事・演武への参加・協力状況などを前提として判断していくわけですが、コロナ禍のいま、その基準も柔軟に対応しなければなりません。



■上級の帯になるためには

 緑帯や茶帯の取得を目指したとき。稽古の頑張りや道場での先輩としての所作といった、本人の努力による部分も大きいところは前提としてあります。しかし、それ以上に。

 大人の門下生の場合は別として、子どもたちを茶帯などの上級に引っ張ろうとしたとき。そこには保護者さんたちの協力がなければ、まず到達できません。



 例えば門下生のみんなが力量を試す絶好の機会である「大会」。この大会は、出場者はもちろんですが、運営や会場設営などの裏方の協力があって初めて成り立つものです。特に先輩たちには、昇級審査や大会会場設営などのお願いをしていますが、その際は当日だけでなく前日や、あるいは早めの時間に送迎してもらわなければなりません。


 昇級審査会では、自分の審査には関係ないのに、それでも手伝ってくれる先輩たちがいて成り立っています。

 いままで自分たちが受けてきた昇級審査がそうであったように、今度は先輩たちになった自分が、後輩の審査のために手伝ってくれているのです。いままで自分が受けてきた恩恵を、後輩たちにも与える。その感謝と奉仕の精神を理解できなければ、そもそも審査を受ける受けないの問題でなく、先輩になる資格がありません。


 いま自分が上級の帯を締めていられるのは先輩たちが尽力してくれて、大会や合宿、審査会が開催されたからこそ。恩を先輩に返せ、というのではなく、返さなくていいから同じことを後輩にしてあげてくれ。


 それが先輩たる所以ですし、求められる役割なのです。



■試験対策

 高校受験真っただ中のシーズンです。何か試験を受けるとき、必死に対策をしますよね。模試を受けたり、苦手範囲を潰したり、講習を受けたり。何をやるにしても、その軸になるのは過去問を解くこと。これは、その入試の傾向(重要視している部分や求めている能力)を理解することに他なりません。


 では空手の審査の場合、どうでしょう。

 よく勘違いされますが、指導員は級や段位、帯を与えることはできません。指導員は審査に推薦し、師範に空手の力量(取り組む姿勢とその成果)を審査していただき、帯を渡しているに過ぎません。級や段位を与えることができるのは、「師範」です。


 となれば、道場が空手を通して、どんな人材育成を目指しているか、どんな先輩を求めているかを知っておかないと、単に「茶帯・黒帯になりたい」だけではたどり着けるはずもありません。


 私がブログを通して発信していることは、空手の深淵からみればごくごく一部に過ぎません。だから、門下生のみんなは師範の言葉や、背中を見て、それを学び取っていくしかありません。その機会であるため、普段の道場行事や、合宿、大人同士で話せる懇親会の機会などを勧めています。もちろん環境によっては常に参加というのも難しいでしょう。だからこそ、そんな考えや思いが詰まっている今回の書籍の機会を逃すのは本当にもったいなぁと私は思ってしまいます。



■最後に

 私が幼い勢いだけの子ども真っ盛りだったころ。「極真の茶帯は伝統派空手の二段クラス」と言われていました。おそらく剣道三倍段的な、喧嘩した場合の話かと思います。


※剣道三倍段…竹刀を持った剣道の人と素手で渡り合うためには、三倍の段があって初めて対等になるという意味のことば。竹刀を持った剣道二段の人を相手するには、六段の腕があって初めて成り立つとされる。


 それだけの力を持つにあたっては、後輩への接し方、力をもっていても使わない強さ、そして責任が求められます。求められる基準は高い。だからこそ、茶帯を締めている、締めてきた先輩たちは誇りをもっています。

 なぜ茶帯を引き合いにだすのかといいますと、最後の色帯の段階だからです。茶帯を締めたときには、これまで目指してきた昇級とは全く違う、昇段を目指す域の修行になります。


 先はながくやることはたくさん。だからこそ、ずっと続けられる。やりがいもある。なにより成長し続けられる。


 空手道を、一歩一歩を踏み出す機会にあたる昇級審査。ぜひ、目標の一つに掲げて、門下生の背中を押してあげてください。


 よろしくお願いいたします。





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