今年の桜前線がどうなっているのか、なんてニュースはまだ目にしていないけれど、違う桜はすでに開ききったようだ。今のところ、咲いた報せだけが来ている。今年の桜はどうだろうか。
桜は日本人が大好きな花だ。新渡戸稲造の著した「武士道」は、桜に例えられてまじまる。『武士道はその表徴たる桜花とおなじく、日本の土地に固有の花である』と。そのあと武士道についての現状について述べ、その力強さを述べるも『それを生みかつ育てた社会状態は既に失われて久しい』と結ぶ。
私たちは春になれば花見をするし、夜の桜でさえ夜桜として親しむ。吉報や凶報は「さくらさく/さくらちる」と表現するし、名前につかったりもする。振り返るまでもなく、最も身近で親しんでいる花だろうと思う。なぜこんなに桜が好きなのだろうか。
思うに桜は、日本人の情緒にあっているのだと思う。例えば、よく美しさはバラに例えられる。色は情熱の赤で魅惑的な形をして、大きな花を咲かせる。けれども桜は、慎ましい花で淡い色を添え、トゲも隠し持っていたりしない。そして何よりも春風に散り、わずかな期間の間だけ咲き誇る。その散りざまにすら、親しみを感じた私たちの国の先人たちがもった情緒を誇りたいと思う。
桜のことを思う時、その花がもつ精神性はなるほど武士道と合致することも多く、新渡戸稲造の例えに納得させられた。そもそも国外に向けて日本の文化を紹介する小著であったため、桜に例えたことは国外の人々にも容易に想像できたのではないだろうか。
空を見上げる。突き抜けるような青い空が広がり、寒さごと包み込むかのような陽の光が降り注いでいる。これから、それぞれの桜が咲き始めることだろう。願わくば、ひとりひとりが悔いなく散って、卒業して、大きな成長ができるよう。春がやってくるのを待っている。
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