2019年6月17日月曜日

U&U

 2019年6月17日(日)、郡山カルチャーパークにて令和はじめての昇級審査会が開催され、約180名の門下生が審査に挑みました。審査を受けた皆さん、おつかれさまでした。そして審査会の手伝いに来てくれた先輩たち、送迎でご協力いただいた保護者のみなさま本当にありがとうございました。




 門馬道場では、師範、師範代、支部長または指導員から推薦された門下生だけが、昇級審査を受審することができ、力量に合わせて帯が授与されます。
 この推薦というのがともすれば大きな誤解を生むことも珍しくありません。


 例えば推薦にあたっては、稽古参加回数、演武などの行事・大会への参加、合宿への参加「など」から判断することになります。稽古回数や行事参加などは客観的な評価なので単純に基本稽古ができる・できない、移動稽古ができる・できない、参加・不参加、○回というように絶対的な数字であらわせるものです。


 もしこのような数字だけで推薦が決められるならば指導員はいらない。



  道場としての昇級基準表を作成して、個別に門下生カードなどをつくって管理していけば、審査前にはエクセルのボタン一つで審査会対象者がリストアップできるようになります。それと同時に指導員がいる必要もなくなるのです。


 指導員の役割りは、客観的な評価だけでなく、数字や外形にあらわれない部分の評価をもくみ取ることです。心の成長や、いまやる気に燃えている時期だ、なんていうのは数値化することはできません。また、数字にあらわれない成長は、向き合っている人にしか拾えません。基本稽古のできる・できないだけで判断できるなら何も悩むことはない。こんな表には出てこない成長を褒めてあげられるのは、常に環境を知っている親か指導員だけの特権です。


 例えば大会で負けて悔しい思いをした。だからこれから週1回のコースから変更して、週3回は稽古しよう。門下生がそんな覚悟を決めたならば、その悔しい思いが稽古に現われているこのタイミングを逃す手はない。指導員がそう判断すれば、例え連続での受審だったとしてもその他の判断を経た上で推薦します。昇級した新しい帯が、もっと成長をひっぱりあげてくれるでしょうから。


 ただしその判断ができるのも初級のうちだけで、中級以上、特に緑帯や茶帯になるための審査からは事情も、判断の基準も大きく異なります。
 つまりそのとき、受ける級と本人の現況、それから未来を見据えて判断しているため、その判断は常に臨機応変。はたからみれば基準はあってないようなものに見えるでしょうし、理解できないことも多々あるかもしれません。


 だから、もし疑問に思うことがあれば都度、聞いていただけると幸いです。門馬道場の指導員、すべての先生方がその考えを伝えてくれると思います。
 もちろん先生によって判断の基準や優先すべきものの順位などは異なってくるでしょう。
 

 でも、これだけは自信を持って言える。推薦する理由も、推薦できない理由も同じだけ言えるし、どのような結果であっても門下生のためを思っての判断という根幹は、すべての先生が同じ。それが門馬道場の指導員です。


 今回の審査会で感慨深いシーン。審査中はスマホやカメラを持ち歩いていないのですが、菜穂子先生が撮ってくれていました。

 推薦したなかで最年少のUちゃん。お兄ちゃんのあとを追って、わくわく武道教室を経て少年部で稽古を頑張ってきました。けれども審査当日は大泣きでご機嫌ななめ(^^;)

 こんなとき、もっと育児に関わってあやしかたを身に着けておけばよかったのですが、大人の男があやすっていうのも逆効果なのかと頭はぐるぐるして、なんだかんだと言葉をかけることが精いっぱい。

 基本稽古が始まっても入れていない場合は、今回は…という判断の中、準備運動がはじまりました。準備運動が終われば基本稽古が始まってしまいます。なんども繰り返してやっと動きを覚えた裏拳回し打ちや太極の型。わくわくや少年部の教室でも、他の子より先輩としてがんばってきました。

 できるのに、できるのを知っているのに。それでも基本稽古審査で列に入れてなければ、次の機会に備えるしかありません。それは正直、悔しい。そんな状況の中でした。

こちらが審査の心構えを説く師範。

その最前列。


 とっても名前の似ているU先輩がついてくれていて、列に並ぶことができていました。基本も最初は動けなかったですが、すこしずつすこしずつ稽古の記憶をたどり、手や足を動かしていきました。そして最後の組手審査までやり終えたのです。


 はたからみていて、それはとても幼く、拙い空手でした。けれども、そこに立って一人きりで最後までやり遂げるということが、本人にとってどれだけ勇気のいることだったか。何より、小さい白帯の子たちが最前列で、師範が座られている前で審査を受けなければならないのでプレッシャーも相当でしょう(笑)。



 その頑張りも数字では評価できません。これだけ頑張った、と確たるエビデンスを提示することもできない。でも同じ道場の仲間は、どれだけ頑張ったかを知っている。

 審査会は、そういった数字に表れない心の成長を確認する場でもあります。腕立てが何回できたから、組手で技ありをとれたから○級というような単純な技量審査ではありません。空手家としての在り方を審査される場であるということは強く覚えておいてもらいたいと思います。


 さて、今回のUちゃんを審査列まで導いてくれたのは、ほとんど同じ名前のU先輩。どっちもUちゃんでややこしいので唯愛とします。

 Uちゃんと同じくらいの年齢で空手をはじめ、当時は大会や審査でよく泣いていたと振り返っていました。私が出会ったときもランドセルを背負っている年齢でしたが、シビアなタイミングでローを返しているとスパーリング中に悔しさからか、ぽろぽろ涙が落ちて「しまったな」と思ったことも(^^;)


彼女が幼い頃は、私はまだ門馬道場にいなかったので分かりませんが、きっと先輩に手を引かれて試合や合宿や審査に挑んできたんでしょう。


それから時が経ち、いまは彼女が後輩の手を引いて、いるべきところに導いてくれています。



 受験があっても空手や大会挑戦をほとんど中断せず、稽古回数は増える一方。みごと受験と空手を両立させて志望校に合格し、高校生になったいまでは、世界大会出自を決める実績もさながら、演芸会に備えて女の子の門下生をまとめてくれています。

土曜日には指導の補助にも入ってくれ、後輩たちからも慕われています。

もう昇級試験を受けることはない唯愛。そう遠くない将来、黒帯をかけて昇段審査に挑戦する日がくるだろうと密かに期待しています。


 今回、たくさん泣いてしまったUちゃんも、やがて時が経ってお姉さんになったとき。これからあとに続いて入門してくる後輩たちの手をひいて、導いてくれる先輩になってくれることでしょう。唯愛先輩がいま、そうであるように。



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