きのう、駅前の喫茶店でぼけっと過ごし、帰りにふらふら寄った書店で、やっと「鬼滅の刃」最終巻を見つけました。
そもそも36歳児として少年の心を持ちつつも、世間の目から解き放たれるビーム的なものが突き刺さるため、少年誌を卒業していました。コミックスで物語を追っていたので、ようやく結末を知ることができました。
閑話休題。
鬼という存在は、私たちにとって身近なものでした。幼いころは「桃太郎」の絵本で見聞きし、「泣いた赤鬼」で道徳の一端を感じ取り、大人になって酒呑童子をボコるまでに成長した金太郎(坂田金時)の姿に胸を打たれます。
いわば使い古されたといっても過言ではない「鬼退治」のモチーフで、なぜこれほどまでにヒットを生み出せたのでしょうか。
「物語が浅い」と批判される向きもありますが、これは指摘のとおりかもしれません。人間と平和を守る。その正義のために、鬼を滅する。清々しいまでの勧善懲悪。
けれどそれでいいんです。私たちは水戸黄門を見たあとで、「物語が浅い」などと批判したりしません。ご老公がスマホのGoogleマップを駆使して、GPSで悪だくみした代官を追いかけまわしてあげくタコ殴りにするというな無茶な設定でもない限り、批判も起きないでしょう。
ある意味で、連載されていた週刊少年ジャンプの三大原則「友情・努力・勝利」に沿った、分かりやすい物語王道の物語だからこそ、少年たちに受け入れられやすかったのではないでしょうか。文学や芸術として扱うのならば致命的でしょうけれども、あくまで商業誌。少年たちの心をつかんだ時点で成功していると言えます。
そして心つかまれた少年たちのために親世代が内部留保を吐き出して、子供が所望する鬼滅グッズを買い、映画館に連れていき、300億を超える興行収入をたたき出したのです。
けれど、時代とともに語り継がれる物語も形を変える。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばさんがしばかりをして住んでいました。なんていうイントロは、
むかしむかし、あるところに、Youtubeライブ配信のスパチャで生計を立てているおじいさんと、ネットオークションの転売で生計を立てているおばあさんが日々レスバしていました。みたいに形にならんとも限りません。
誰もが知っている桃太郎。仲間は、犬、きじ、さるです。どう考えても、荒くれの漁師とか筋骨隆々のもののふとか連れて行った方が安心だと誰もが思うでしょう。金銀財宝やお姫様もブン取り返すならば、山賊やおいはぎも連れて行った方が、その道のプロなのでなお大きな効果が期待できるでしょう。
しかし物語では、仲間というよりむしろ家来。吉備団子で買収するという、資本主義と封建制度の権化なパーティで鬼ヶ島に凸るわけです。今の時代ならアニマルライツとかコンプライアンスがうるさいかもしれません。けれど「鬼」という架空の存在は、どれだけフィクションの世界で合理的な理由なく征伐されても、誰も文句を言わないのです。
桃太郎ガチ勢によれば、この家来にも意味があるとのこと。
いわゆる陰陽五行においては、鬼は北東の方向から出入りすると言われています。これが鬼門。干支でみればその方角は、丑、虎の方向にあたります。
だから鬼は牛の角を持ち、虎のぱんつを履いる姿で描かれます。当時はブリーフもトランクスもないはずなので、ふんどしじゃないかと思いますが、そこは置いときましょう。
ただ「虎穴に入らずんば虎子を得ず」というように、虎の毛皮をとるのも多大なリスクを伴うに違いない。いくら屈強でも、金属の棒やっきれや釘バットみたいなの装備してても、虎をガツンとやるハートは私にはありません。えらく壮大な毛皮のパンツですが、これも現代ならば「残酷だ、動物の権利を蹂躙してる!」とのそしりを免れないでしょう。
そして鬼門の正反対にあたる干支が戌、酉、申。この3匹を家来にしたのだと言われています。そしてこの3匹を連れて、鬼が島に乗り込むのです。
それこそ動画ストリーミングサービスサイトで配信でもしながら乗り込めば「神回」としてすごい再生数を叩き出しそうなものですが、どうでしょう。
現代では憲法9条1項により侵略戦争が放棄され、2項により形式を問わず一切の戦争を放棄しているものと解釈されています。自衛隊のみなさんは専守防衛。国を守ることだけに、日夜厳しい訓練を積まれているわけです。
ところが桃太郎においては自ら仲間を引き連れて鬼が島に乗り込み、他人の所有物である宝物やお姫様を奪還しています。占有権を害された鬼からすれば、正直、「鬼滅の刃」完結についてのの感想を書くつもりが、着地点が見えなくなってまいりました。
末筆ではありますが、私が言いたいことはただ一つ。
鬼滅の影響で、剣道を始める子たちがとても増えたとのこと。
だれか鬼を、、、誰か鬼を正義の鉄槌だけではっ倒していく、徒手空拳過ぎるヒット漫画を描いてください!!
端野洋子先生(道場がモデルとして登場!『アイアンスノー1~3』絶賛発売中!)、ぜひよろしくお願いいたします。
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