2022年12月8日木曜日

映画『南極料理人』

 素の文体で、誰への配慮もなく好き勝手かけるブログも時折、書きたい。レビューならば誰に迷惑がかかることもなかろう、ということで、読んだ本や観た映画のおすすめを紹介していく記事を不定期に書いていこうと思う。

 今回は、映画『南極料理人』をご紹介。(Netflix)

 

 極寒の世界では生物はおろかウイルスすら生きることができない。そんな環境の中、基地では各分野から派遣された8人のチームが第38次南極地域観測隊として、観測の任務をこなしていた。

 はっきり言って、舞台が南極の「ドームふじ基地」であることを除いて、特筆すべき設定はない。誰かが死ぬわけでもないし、大爆発が起こるわけでもない。ただただ極寒の地で任務にあたる日常が描かれるだけである。なのに、なぜこんなに魅入ってしまったのだろうか。


 映画の主人公は、海上保安庁から調理担当として派遣された、堺雅人さん演じる西村である。観測、通信、車両、医療など各分野から派遣されたスペシャリストたちは、それぞれ全く異なる役割を担う。

 そんなチームが役割を超えて通じ合えるのが娯楽と食事である。中国文化研究会と称して麻雀に興じたり、全員で日課としてレオタード姿のお姉さんが出る体操をしたりもする。中でもやはり、食事が惹かれる。

 

 趣味や娯楽は、少なからず価値観が影響を及ぼす。麻雀に狂う人もいれば全く興味ない人もいる。しかし、食事は全人類共通である。感情移入しようとさせなくても、日常生活の一部としてごく自然に受け入れることができる。

 詳しくはぜひ映画を観ていただくとして、一番初めに出てくる料理を見てみよう。とある夕食のシーンである。

・ぶりの照り焼き ・刺身 ・天ぷら ・おひたし ・煮物

 ものすごい高級な料理や希少な珍味が出てくるわけでもない。けれども、人はおろか生物すらいない環境の中においてはとても魅力的に感じる。


 経済学では、「ものの価値」の見方にはいくつかの視点がある。例えば、「おにぎりとダイヤ、どっちかあげる」と言われればほとんどの人がダイヤを選ぶだろう。けれどもこのような南極、または遭難した際の山小屋で同じ問いかけがあれば、答えも変化してこよう。

 何気ない家庭料理も、この環境下でみれば、ごちそうなのである。


 私たちの日常においてありふれた出来事や行いも、環境一つ変わるだけで、それがどれだけ恵まれたことであったかを知ることができる。調理担当の西村が映画の一番最後に発した一言は、それを如実に物語っている。

 日々感謝の気持ちをもって。なーんていうけれど、それが本当の意味でできるようになるのは、厳しい環境に身を置いて、ありがたさを体に叩き込んだ(込まれた)人だけなのかもしれない。

 ぼーっと見てられる映画で、疲れてるとき。眠りながら観るのにほんとにおすすめな映画でした。




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